わが国では、「歩く姿は百合の花」のたとえに使われたように、清楚で魅せられる美しいユリの花を野山でたくさん見ることができました。 身近に飾れて、香りの素晴らしい、花型花色ともにほれぼれするようなユリを創りたいと品種改良に取り組んでいます

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ササユリの八重個体の発生について

長年ユリ栽培をしていますが、自然の中で八重の個体が発生するのは非常にまれです。
福井県木の芽峠と富山県唐木峠のササユリに八重個体が出現しましたが、花型や草姿のバランス(茎に対して花が重い)が良くないため観賞価値の点では一重のほうがすぐれています。

福井県木の芽峠ササユリ
2021,6,18開花個体 2018,6,18開花個体 2019,6,17開花個体 2013,6,28開花個体 2023,7,2開花個体


富山県唐木峠ササユリ    



2018,6,24開花個体


2018,6,24開花個体




長野における気候温暖化による
四倍体と思われる個体の発生状況について

 最近(2019年か2020年頃だったと思いますが、)地球温暖化が身近に迫り、涼しいはずの長野の北部でも朝の空気が変わり、灰色がかった朝霧に不気味さを感じていました。
 ユリの畑は、日陰を獲得するためにワラビを主体にした雑草の中で栽培しています。開花期が終わっても9月末までは通路を含め、ほぼ放任状態にして夏越ししています。秋にはワラビやその他の雑草もかなり取り除き、そこそこ明るくしてやります。
 個体数は少ないのですが、ユリの開花期に非常に元気に育つ個体が目立つようになり、「生育優良個体」として選抜、自家受粉で種子を採り、リン片繁殖しています。2022年になって、やっとこれは四倍体だと気が付き注目しているところです。2023年は大旱魃で、ユリの茎立ちは激減し、四倍体と思われる個体は一本も出ませんでした。
 四倍体は自然状態でも稀に発生しますが、作物の育種に実用化されるようになり、人為的には,①物理的には高温、低温、遠心力を使い、②科学的には色々の麻酔剤(クロロホルム、エーテル、コルヒチン、アセナフテン等)が私用されたようです。古い話ですが1920年頃に始まり、1930年代頃から1940年代に盛んに研究が進み、品種改良に応用されたようです。(赤藤克己著、作物育種学汎論、昭和3年4月5日第一版発行)
 長野では自然条件下の高温で、四倍体が発生したと思われます。
四倍体の最大の特性は、1)巨大化する、2)耐病性、耐寒性がつく、3)旱魃に強くなる等、育種素材として都合の良い素質を持っていることです。
 私のところで自然に出た<温暖化のめぐみ>とも思える四倍体は、2022年三重県磯部町産ササユリの場合、茎が太く、直立し、草丈が80㎝もあり、葉も長く、花も大きくなっていました。不思議なことに開花期は同じ、球根も普通の大きさでした。岐阜県産舞台峠産ササユリと明日香の舞×静岡県藤枝産ササにも四倍体の発生が見られます。ササユリ特有の、楚々とした魅せられる美しさはありませんが、商品としては歓迎されるかもしれません。
 参考) 生殖細胞に表れる染色体が、2nからnに成熟分裂しないで、まれに2nから2nの染色体を持つ配偶子が出来ることがあり、受精して4n(四倍体)の個体が生じることがある。このようなものを倍数体という。さらに4n+4nで8nになる個体も生じるが有用性が無く、八倍体は育種に利用されていない。
明日香の舞×静岡県藤枝産ササユリ、岐阜県舞台峠産ササユリ、三重県磯部町産ササユリの四倍体は、培養室での無菌播種、袋播き、リン片繁殖したものを畑に定植する等で、個体確保しています。

二倍体 四倍体
明日香の舞
 ×静岡県藤枝産ササユリ

2013,6,13開花個体

2019,7,4開花個体

岐阜県舞台峠産ササユリ
2016,7,2開花個体

2021,6,30開花個体

三重県磯部町産ササユリ
2013,7,8開花個体

2022,7,12開花個体